【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜

「さぁ!あとは、要人。あんたの番よ。とは言え。あんたの外見がほぼそれでいいと思うけど…そうね。ポケットチーフは、忍とお揃いの色にしましょうか。それと髪型は…」

ジュリアンは独り言のようにぶつぶつ呟きながら、俺の髪を掻き上げてザッと整えてから、胸元にボルドーのポケットチーフを差し込んだ。


「はい、完成!」

「なんだか、俺のことは手抜きじゃないか?」

「はぁ?そんなわけないでしょーが!なんなら、忍の方見てみなさいよ!」


そうキンキン声で叫ばれ。俺は片耳を抑えながら、彼女の方を振り返った。
と、彼女はそんな俺を見つめたままで動かずにいた。


「忍…?」

「…あ。…あの…よくお似合いです…」

「そうか?ありがとう。忍に褒められると最高に嬉しいな」


にっこり笑って見せれば、彼女はどこか居心地悪そうに視線をあちこちにやる…。


「ん…どうした?」

「私、大丈夫でしょうか?」

「…何が…?」

「要人社長…私のこと連れ去ったりしないですよね…?」


そんな可愛いことを言われたら、からかいたくもなる。


「…連れ去ってもいいのなら、そうしたいんだがな」

「さ、されたくありませんよ!」


サッと身を翻して、ジュリアンの後ろに隠れる彼女。
それにムッとすると、ジュリアンが盛大に溜息を吐く。


「…あんた達。まだココに私がいるってこと忘れてなぁい?」

「「あ…」」

「はぁ…まぁいいわ。じゃあね。要人、忍。良い夜を…」

意味有り気な言葉と共に、ジュリアンは部屋を出て行った。


「さて。じゃあ、行くか」

「え…ど、どこに?」

「折角こんなに素敵な女性がいるんだ。エスコートさせては貰えませんか?お姫様?」

そう言って、彼女の手を取り身を引き寄せた。