ぷつん

内線が切れて、暫しの沈黙。
彼女は不機嫌そうに眉を潜めて、けれどきちんと鼻孔をくすぐるような上質なコーヒーをトレイに乗せて、このいきなり飛び込んできた『来訪者』をもてなそうと、部屋に入ってきた。


そういう隙を与えない、あくでも「私は秘書だ」という意思表示を見せ付ける、彼女のことが愛おしくて仕方がない。


「失礼致します。コーヒーをお持ちしました」

「わざわざありがとう」

「いいえ。…それでそちらの方は…?」


アーモンド型の瞳がゆっくりと『来訪者』の方へと移りゆく。
それにまで嫉妬しそうな自分を戒めることに集中した俺に構わず、ジュリアンが先に口を開いた。