ぎゅっと下唇を噛み締めて、無理矢理とびきりの笑顔を向けた。


「素敵な彼女さんを、ちゃんと幸せにするんだよ、裕治くん。私、これから用事あるからこの辺で。また、ね」


またねの言葉が出てこなかったのは、また会う約束を作りたくないと私自身が、自分を守ろうとしたのだろうか。


「あ、そうだったんだ。せっかくだからゆっくりしてもらおうと部屋の掃除済ませたのに、必要なかったな。ありがとうな!」


こくりと頷いて背を向けて歩き出す私は、もうどこに感情をぶつけていいのか分からずにいた。

ハッキリとしたこの結末に、切ない想いはないけれど何故か涙が溢れそうになる。

ただの勘違いで終わった、この結末に対してみんなして笑うんだろう。

中学の頃に憧れを抱いていた、裕治くんとの距離を縮めようとしていたのは――過去の私の強い想い。

ただ今の私は何かに溺れたかった。

ただそれだけだったんだ。

心の傷を癒したいが故に、何かにしがみついて離れないようにして考えたくなかったんだ。

馬鹿な自分の考えに嫌になってくる。