裕治くんの元へ駆け寄ってきて、私の存在を確認したその子は子犬のように首を傾げながら訪ねてきた。
「あれ?この方って……昨日ゆうくんが言ってた都会で一人で一生懸命頑張ってるっていう中学の時のお友達……?」
「ああ、晴美から貰った腕時計をお店に忘れてきちゃったのを届けてくれたんだ」
「また〜?ゆうくん忘れ物したんだ〜ふーん!」
頬を膨らませて裕治くんを睨みながらも、ふふっと笑う顔は女の私から見ても可愛らしい子だった。
「ありがとうございます。あの腕時計結構高かったし、私達の思い出が詰まったものだったんです」
「あの……あなたは……」
「ああ、紹介してなかったよな。俺の彼女の晴美」
分かっていながらも聞いたその質問に対して、返ってきた返事はあまりにも呆気ない答え。
白黒ハッキリした自分の心に、ようやく納得する。
彼女と言われた晴美さんは、少し照れくさそうに小さくお辞儀をした。



