手入れがされてあるその腕時計は、裕治くんが大事にしている証拠だ。
腕時計も持ち主の元へ帰ってこれて、なんだかほっとしているようなそんな気がした。
「本当に大事にしてるんだね」
「ああ。これな――」
腕時計をそっと撫でて、何かを語ろうとする裕治くんの声をかき消すように声がかかる。
「ゆうくーーん!!」
手を大きく振りながら駆け寄る一人の女性。
元気いっぱいの明るい印象の強いその子に、胸騒ぎがした。
「晴美!なんだ、今日こんな早かったのかよ」
そう言う裕治くんの声は、私の聞いたことのない優しいそして、温もりがあるそんな声。
その声に何かが引っかかる。



