見えてきた途端、何故か急にドキドキと心臓が早く動き始める。
昨日の感覚が蘇って、耳元で感じた吐息も抱きしめらたあの感覚が体をくすぐる。
ダメよ、冷静になって!!!
私は……ちゃんと気持ちを知りたいの。
裕治くんの本当の気持ちを。
アパートを睨みつけるようにして力強く歩こうと踏み出した時、聞き覚えのある声を耳が捉えた。
声の主を探そうと振り返ろうとする前に、声の主が姿を表した。
「遅かったから迷子になってるかと思って、迎えに行ってたのに若干すれ違ってたな」
そう言って笑ってみせたのは紛れもなく裕治くんだった。
熱くなる体を抑えて、鞄の中から腕時計を出す。
「こ、これ。裕治くんの……だよね?」
「ああー!俺の!!危ねぇ〜これ大事な貰い物なんだよ」
裕治くんは腕時計を大事そうに私から受け取ると、すぐさま自分の腕に付けて、感覚を確かめるように何度も何度も時間を確認した。
確認し終わるとよしと言って、私に腕時計を見せつけて来るように腕を突き出した。



