どうして壱目さんは……こんな大切そうな物を私なんかに渡したんだろう。

どこか欠けた部分とかないよね?

こんな高そうな物、弁償することになったら結構大変だし、第一大切な物だったら弁償しても償えないかもしれないし。

確かめて見てみるけど、傷も欠けている部分もない。

ほっとしつつ、そっと鞄の内ポケットに入れる。

スマホを開いて時間を見れば午後1時を過ぎていた。

そのまま香織から教えてもらった住所をスマホで調べ、マップを開く。

電車を使っても30分ぐらいはかかる隣町に入るか入らないかぐらいかの場所に、裕治くんの住むアパートはあった。

ここから駅まで行って、向かうとしてもざっと3時近くになるけど、まあゆっくりと行こう。

でも突然家に来られるのも裕治くんからしてみれば迷惑だし、というか今日仕事かもしれないし連絡は入れなきゃ。


“昨日の忘れ物届けに行っても大丈夫かな?香織から住所は教えてもらった!”


そう送るとすぐさま返事が返ってきた。


“まじか、ごめん!ありがとう!!家で待ってるから、迷わずにな(笑)”


裕治くんらしい返事にクスリして、返事を短く返して家を出る。