ざわざわとするこの胸をどうにか落ち着かせたい。
こうやって迷ってるぐらいなら――
持っていた紙袋から、香織の書いたメモを取り出す。
そこに書かれた住所を見て、決意を固める。
少しずつでいい、前へ進めばいいのよ。
耳に当てていたスマホと紙袋を部屋の机へ置き、キャリーバッグから服を取り出し着替えを済ませ、下へ降りて洗面所で身支度をする。
着飾らないで、このままの私で挑むそう決めて髪を一つに束ねる。
ナチュラルメイクを施したら全部完了。
よしと鏡に映る自分にOKを出す。
大丈夫、私は綺麗だから。
保証してくれる人が……壱目さんはそう言ってくれた。
そうだ、この忘れ物届けた帰りに壱目さんの所行ってブローチ返さなきゃ。
部屋に戻り裕治くんの腕時計を鞄に入れて、机の上で輝くブローチを手に取った。



