「堀川、送る」
そういきなり手を取られて、強引に引っ張る裕治くんに驚きを隠せない。
お酒に飲まれてもないし、ぶっちゃけお酒よりもご飯に手を伸ばしていた私は集まった人の中で誰よりも頭が回っている自信があった。
終電に間に合う時間だから電車で帰れば、そこからは家まで歩いて10分もかからない。
送ってもらわなくても大丈夫だと言おうとするものの、裕治くんの手に力が入る。
「ゆ、裕治くん……!」
思い切ってどうしたのかと聞こうとすると、裕治くんの足が止まった。
急に訪れたこの状況に、お酒は回っていないけど頭はなかなか動いてくれない。
なんとか会話を作ろうと話題を思い起こすけど、喉に何か張り付いているみたいに上手く言葉が出てこない。
ドキドキとうるさいくらいの心臓の音が、裕治くんに聞こえてしまうんじゃないかって思うくらい、激しく動く。
掴まれた手から伝わる熱に頭がクラクラする。



