この人絶対、悪い人じゃない。
そう直感的に思った。
確かに容姿……髪型については怪しさしかない。
でも、ここのお店に対する想いは本物だ。
そんな立派な人に対して、私なに変なこと考えていたんだろうと、恥ずかしさと申し訳なさが滲み出た。
きっと、お客さんが来なくて寂しいんだ。
だから、私に食べてほしいって言ってくれたのかもしれない。
なら、お言葉に甘えてお代わりしちゃおう!
「あっ、あの……!」
「お代わりですね。今お持ち致します」
満面の笑みで、BGMの曲を鼻歌で刻みながらお皿にティラミスを盛り付けていく。
そんなオーナーさんに、少し驚くけれど、なぜか笑みが移ったように私も小さく笑った。
「あの、すみません。オーナーさん、お名前は?」
「壱目(ヒトメ)と申します」
名字なのか名前なのかは分からない。
でも、ほんの少し縮まったこの距離に嬉しさを覚える。
「私、堀川 雪帆(ホリカワ ユキホ)。よろしくね、壱目さん」
ほんのちょっぴり不思議なカフェで、出会った不思議な人。
そんな不思議な出会いが私を大きく変えていくなんて思うことも無く、もう一切れ差し出されたティラミスに目をキラキラと輝かせた。



