活気に溢れた街の中心街を通り、数多く架けられている橋を渡り、大勢の住人や魔物に挨拶されながら入り口が見える所まで行くとーー


その特徴的な金髪の背の高い男が馬の鼻を撫でているのを見たラスは、コハクの腕からもがいて降りると駆け出した。


「リロイ!」


男ーーリロイが振り返る。

その瞳は碧く、髪は金色で、神話の勇者に例えられる風貌の幼馴染との再会にラスは何度もぴょんぴょん跳ねて喜んでコハクに舌打ちさせていた。


「ラス、久しぶりだね」


「リロイどうしたの?ティアラはっ?」


「ティアラは置いてきたんだ」


銀色の鎧と白いマント姿でまさに勇者然としたリロイは白い歯を見せて笑い、ラスをぽうっとさせてコハクをさらに苛立たせた。


「あー、そこに居るのはもしかしてーオレを卑怯な手で刺したりチビをモノにしようとした奴だっけかなー?!」


「お前も相変わらず元気そうで残念だよ」


腕に飛び込んできたラスを抱きとめたリロイがにこっと笑いながら応酬し、きらきらした目で見上げて来るラスの変わらない外見に苦笑した。


「ラスは全然変わってないね」


「うん魔法をかけられたから。それよりリロイ、かっこよくなったね、素敵…」


30代になろうかという年齢に差し掛かったリロイはどちらかといえば童顔だったが、ラスは10代の頃と変わらないまま。

本当に不死になったんだな、と呟いたリロイの前までやって来たコハクは、ラスを引き剥がしながら嫌味たっぷりに顔を覗き込む。


「一国の王様が何の用事ですかねえ?」


「こんなこと言いたくないんだけど……お前に協力してほしくて来たんだ」


リロイが共にここまで駆けてきた数人の騎士団の者たちを振り返る。

彼らは一様にどこかしら負傷しており、よく見ればリロイの腕も擦過傷があった。


「その怪我どうしたの?」


「話せば長くなるんだ。彼らを休ませたいから中に入れてもらってもいい?」


「駄目!絶対!」


「うんいいよ、怪我の手当てもしなくちゃ。コー、いいよね?」


懇願の目で見て来るラスの願いを無下にするわけにいかず、背を向けたコハクは人差し指をちょいちょいと振って手招きした。


「協力するかどうかは別として怪我の手当てはしてやる。ついて来い」


「コー、大好きっ」


魔王が大好きと言われてにんまりと笑う。
ラスは実に単純な方法でコハクを喜ばせると、リロイの手を引いて奥へ向かった。