「三崎!」



警察と入れ違うように、廃ビルから出てきた知由を見つけた瞬間、友奈は名前を呼んだ。


だが、知由は読み取れない表情をして俯いていた。


顔を上げる気配はない。



それでも何かを感じ取った友奈は、知由の隣にいる雪兎に視線を向けた。



「どうなったの……?」


「……ボスだけ捕り逃したって感じかな」



知由だけじゃなく、雪兎の様子もおかしい。



今日初めて会ったのに、友奈はなぜかそう感じた。


そして、知由との約束を今実行するべきではないとも思った。



「一弥! 海!」



少しして出てきた二人に、滋が駆け寄った。



だが、二人もまた、浮かない顔をしていた。



「一弥? 海? 何があったの?」


「悪い、後で話す」



一弥が答え、二人はおぼつかない足取りで、警察のもとに歩いていった。



滋はその二人の背中を見つめることしか出来なかった。



「ちぃちゃん、行こう?」



近くで、雪兎の声が耳に入り、滋は視線を移した。



どうして、みんな事件解決しているのに、スッキリしない顔をしているのか。



多くの疑問を残したまま、この事件は幕を閉じた。