夢里が高校二年生のとき。



夢里と洋一は、洋一の家にいた。



「子供出来たって……本当に?」



洋一はオレンジジュースをローテーブルに起きながら、座椅子に座っている夢里の前に置いた。



「……うん」



でも夢里はそのジュースではなく、膝の上に置いている拳を見つめる。


そして流れるように自分のお腹を見る。



「どうするの?」



自分のジュースも置き、洋一も腰を下ろした。



「私……産みたい。洋一くんとの子だから、とかじゃなくて……この子の命を奪いたくないの」



顔を上げた夢里の顔は、真剣そのものだった。


曇りのない瞳は、覚悟を決めたことを感じさせる。



「そっか……でも、俺も夢里もその子を育てられるような環境にいないよ?」


「そうだけど……」



夢里は再び視線を落とした。



「……お義母さんに相談してみる?」



洋一の言葉に、夢里は目を見開いた。



「いいの?」


「なんで? 俺は、夢里がその子の命を大切に思ってるってわかったから、どうにかして育てたいと思ったよ?」



洋一は優しく微笑む。