人1人いないホームのベンチに2人で腰を下ろし、ほっと息をつく。
「あ、あの。」
先に静寂を破ったのは誠だった。
この間のこともあってか、いつになくか細い声になってしまう。
「…?」
「この間は、すみません。先輩に失礼なこと言ってしまって…。なんていうか、その、自分でもなんて言ったか覚えてないんですけど、失礼なことしたのだけは自覚してて。」
「あー…、あれかー。」
誠は翔里の顔を見ることができなかった。
きっと怒りに満ちているに違いない、と思い込んでしまっていた。
恐る恐る下げた頭を上げ、翔里の顔を盗み見る。
と、誠は驚きに目を見開いた。
「全然気にすることない。ていうか俺、あれで結構元気出たよ。」
「…え。」
翔里の顔には、作り物でも貼り付けたものでもない、自然な笑みが浮かんでいた。
大きく整った一重の瞳は細められ、薄く淡いピンクの唇は綺麗な弧を描く。
艶のある黒髪を光が照らす度、優しい風が揺らす度に、誠は翔里を''綺麗''だと思った。
「俺さ、もうあの時ほぼ諦めかけてた。部活辞めてやろうかと思った。戦力にならない俺なんていない方がいいんだって、必要とされないって…。」
「そんな…。」
「だから、ずっとチームメイトに会うの避けてた。体育館にも行かないつもりだった。
けど、あの日八木さんに言われた言葉思い出してさ、体育館行くことにした。」
「え…。」
「早速チームメイトに会っちゃって、何言われるかドキドキした。そしたら、『お前がいなきゃ始まらねーわ。』だってさ。
…それで俺、ほんと嬉しかった。仲間に必要とされてて、ほんとに、嬉しくて。
八木さんのおかげ、ありがとう。」
「あ…いや、そんな。自分としては失礼なこと言ったと思ってたので…。
力になっているならよかったです…。」

