【短】キミを好きだと叫んでみたら

「…っ…李弥、今日の用事って…そいつとなの?」

「え……?」


嫉妬にまみれた自分は醜い。
それでも止められない。


「紘汰くん…?」

「そいつには、平気で笑顔向けるんだ…?」

「こ…」

「李弥の事、俺…分かんなくなって来た」

「おい、あんた」


一人で地団駄踏みそうな勢いの俺に、ずっと李弥の隣りに居て傍観していたそいつが、唐突に声を掛けてきた。
その声はムカつくほど落ち着いている。


「何を勘違いしてんのか知りませんけど。俺コイツの弟ですよ」

「………へ…?」


ぶっきらぼうにそう言われて、切羽詰まった緊張感がフッと抜けていく。


「一人で熱くなってるとこ申し訳ないですけど…俺、あんたみたいな奴が姉貴の彼氏だって事…認めませんから」


行こう、と李弥の肩に手をやって俺から離して歩き出す。
その李弥の横顔は涙が溜まっていて、俺の方を見ようともしない。