「え、音楽?
今から音楽なの?」

「はい、そうですよ。
その準備は姫がするんです」


私と頼くんとめぐは3人揃って音楽室へと向かう。
正直音楽室なんて初めて行くんだけどね…

頼くんだって私たち同様神楽1年目なのによく知ってるよなぁ…
もしかして、マニュアルに全部書いてあるのか…?


「っていうか今まで音楽とかなかったよね?」

「はい、秋だけの特別授業です。
音楽だけでなく、春には茶道、夏には書道があったように、秋は音楽なんです」

「へぇ…そうなんだ」


茶道に書道ね…確かにあったわ。
書道も茶道も小さい頃やってたし、音楽も得意科目だから今回も高成績もらえそうだな。


「こちらです」

「……おーーっ」

「めっちゃ普通」


神楽の音楽室は一体どんなところなんだと思ったけど、ここはいたって普通の教室だった。
唯一普通の教室と違うところといてば、ここの机と椅子は動かすことができる。
いつもの教室は机と椅子が固定されてるからね…


「こちらの準備室から、その日使うものを用意するんです」


そういって、音楽室奥の扉から出ると、そこにはまた廊下が続いている。
…どういうこと?
廊下から音楽室に入って、音楽室の後ろのドアにはまた別の廊下が存在するって…


「…なに、この空間」


それはめぐも私と同じように、不思議な光景だったらしい。


「準備室はこちらになります。
その先のドアは個々の練習部屋となります」

「は?…練習部屋って…
え、じゃあ授業は音楽室だけど、練習するときはこっちに移動するってこと?」

「はい。
まぁ授業という授業は恐らく今日の一回だけで、あとはテストの日くらいしか使わないと思います。
テストまで、ずっと個人練習かと思われます」

「え!?」

「……なにその超楽な授業…」


ま、まぁそうだよなぁ…
だって今学期だってあと1ヶ月半だし、授業だってたぶん4、5回くらいだろうし…
本当、成績のためだけにある科目だな…


「神楽の音楽の授業は毎年楽器や曲目が変わる噂です。
……今年はピアノとバイオリンみたいですね
ピアノは毎年固定らしいですが、バイオリンは3年に1度くらいの周期で回ってくるみたいで、今年はバイオリンが予想されていましたが当たりですね」


机の上に置かれたタブレットを見て、頼くんがバイオリンに手を伸ばした。

……っていうか、予想されていたことすら知らなかったんだけど…そういう情報はどっから仕入れるんだよ…


「ピアノとバイオリン、かぁ…」

「姫がピアノで主人がバイオリンですね」


ピアノかぁ…
難しくない曲だといいけどな…