ただ、足の速い人や絵の上手い人など、飛び抜けた才能の持ち主がクラスに一人はいるもので、その人たちには鬼龍院くんでさえ勝つことはできない。


でもその時、鬼龍院くんは言ったのだ。


「今回は一番をとれなかったが、君には僕にない才能がある。その才能を開花させた君の努力を心から尊敬している。僕より凄いんだ、もう少し胸を張るといい」


私はこの鬼龍院くんの言葉が大好きだ。

なので鬼龍院くんと話したことはないが、一方的に『他人の功績と努力を認めることができる』鬼龍院くんを、私は尊敬している。



さて、この鬼龍院くんが、唯一誰にも譲らなかった一番がある。

テストの点数だ。

一年生の頃から必ず一位。何度見ても一位。いつも一位。


だけどそれはこの前までの話だ。


だって鬼龍院くんは、この前のテストの成績で一位になれなかったのだから……。