「で、改めまして、何で彼方がここに? 教室でみんなに囲まれてたのに」
「……柚月が、帰ってこなかったから。売店行ったにしては帰りが遅いなって、心配した」
「あ、あははごめん……その、売店に行こうと思ったんだけど財布忘れちゃってさ、そしたらたまたま先生と会っちゃって」
「……そう、なんだ」
「でも、彼方はみんなに課題とか教えてたんじゃないの? ほら、女の子たちが教えて~って」
女の子たちが「教えて」と言ったことに対して、彼方も「いいよ」と返していたはずだ。
「それは、また今度にしてもらった」
「そう、なんだ……もう、私のことなんて気にしなくていいのにー!」
"気にしなくていいのに〟
その言葉を発した瞬間、例えようのない違和感が胸の中に広がった。
まるで、『本心は違うでしょ』とでも言いたげな、そんな違和感。



