「……ごめん、柚月の声がその……──だったから、ちょっと、理性が」
「へ??」
「……うん、勉強しよ。このままじゃ本当に、柚月のこと……な、なんでもない」
ぶつぶつと顔を赤くして私から離れた彼方。
い、いったいなんだったの……?
「じゃあ、勉強の続きしよっか」
「う、うんっ」
触れられた耳の熱さを誤魔化すように、私は必死に教科書と向き合う。
だけどその日はずっと、耳元に集まった熱が引くことはなかったのだった。
……それからテストがある数日間、放課後は彼方と二人きりの勉強会を開いた。
最初は英語だけだったテスト勉強だが、ついでだからと彼方はテストがある教科全てを私に教えてくれたのだ。
そして気付けばテスト当日。
やれることはやったんだし、後は彼方から教えてもらったことをちゃんと落ち着いて思い出すだけ!
よしっ、と気合いを入れて向き合った中間テスト。
特にこれと言ってつまづくこともなく、中間テストは無事に終わりを迎え、
そして、すぐにテスト用紙の返却日はやって来た。



