キュッと、彼方は私の手を握る。


「私が、彼方を……救った?」


違う。それは違う。

私は彼方を救ったんじゃない。

私は……



「昔、柚月が俺と一緒にいるって言ってくれたこと……今でもちゃんと覚えてる。最初はそんな言葉信じられなかった……でも、柚月はちゃんと俺の傍にいてくれた」


頭も良くなんでも器用にこなし、周りから凄いね偉いねと言われながら育ち、

その言葉に押し潰されて、そんな言葉はもういらないと全てを諦めてしまった彼方。


信じることすら、彼方は諦めていたんだと思う。


だからこそ、私だけは諦めないと誓った。


「でも私は、一緒にいてあげることしかできなかった。本当に、それだけしか……」

「それだけなんて、言わないで」

「ひゃっ!?」


突然、私を抱き締める。

首もとに顔をうずめ、甘えるように私にすり寄った。