「それにしても彼方、本当に英語得意だったんだね……あれだけ一緒にいたのに、知らなかったな」
私の知らない彼方の一面を見てしまうと、どうしてもちょっとだけ寂しくなってしまう。
私の知らない彼方がいる。
また、彼方が遠くに行ってしまったような、そんな感覚。
「ああでも、彼方って昔は凄く頭もよかったし、今でも勉強すれば学年上位狙えるんじゃ」
しまったと、そこで言葉を切る。
彼方に昔話は禁句だ。
話題を変えないと。
「あ、あー、そういえばー、んーと……!」
「無理に……話題、変えなくていいよ」
「あー……ごめん。昔の話、嫌だったよね」
「いろいろあったけど……柚月のおかげで、救われたから」



