「…………彼方」

「ん、なに?」

「…………これ、分かりません」

「……柚月って、本当に英語苦手なんだね」

「返す言葉もございません」


開始数分、早くもいくつかの問題につまずいてしまった私は、深々と彼方に頭を下げていた。


「頭なんて下げないでよ。教えるためにいるんだから、そんなに恐縮しないで?」

「うぅ……だって……っ」


自分のあまりのできの悪さに悲しくなってくる。


現在、放課後の教室。


クラスのみんなは相変わらずさっさと帰ってしまい、残っているのは私と彼方だけだ。


「ここは確か教科書の……このページ、かな。それでここがね」

「んーと……あ、そうか。ありがとう彼方、やっと理解できてきた気がする!」

「ん、どういたしまして」


彼方の教え方はとても分かりやすく、絶望かと思われた勉強もすらすらと解けていく。