手を少しだけ振って彼方の背中を見送る。


直後、周りにいた女の子たちがわらっと私の周りに集まってきた。


「近衛さん、いったい一色くんはどうしちゃったの!?」

「いつものだら~っとした一色くんも可愛かったけど、カッコいい一色くんも最高……」

「いいなぁ近衛さん、あんなにカッコいい幼馴染みがいて、しかも凄く仲がよくて」

「ちょっと、あんたには仲のいい彼氏がいるでしょーが」


口々に、みんな彼方がカッコよかったと興奮気味に言う。

そして次の試合が始まると、また彼方に黄色い歓声が沸き上がった。


……まるで、私の知らない彼方がそこにはいるみたい。


そんなモヤッとした気持ちを抱えながら、私はその光景を一人でじっと、見つめていたのだった。