そして、よく喋る方でもなく人付き合いが良い方でもない彼方の周りには、気づいたら私以外誰もいなかった。


彼方を褒めていた大人たちも、

そんな彼方に媚を売るように話しかけていたクラスメイトも、

彼方がなにもしなくなった途端、みんな。


『柚月だって、きっと俺のことなんてもう必要ないんでしょ? どっかいっちゃうんでしょ?』

『そんなことない! 私は彼方と一緒にいる!』

『嘘だ、そんなの』

『嘘じゃない!』


ギュッと、今よりも小さい彼方の手を握る。


『どんな彼方だろうが、私は彼方と一緒にいる! 絶対にどこにも行かないから!』