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『……みんな、俺のこと凄いって言うんだ』



ノイズが走るように流れる風景。

これは、私と彼方が小学生の頃の思い出だ。


『凄いね凄いね、一色くんは本当に……凄いねって』


そうだ、彼方は昔は天才なんじゃないかって言われるぐらいにテストもいつも満点で、走るのもいつも一番。

何事にも真剣で、何事にも人一倍真面目に頑張る子だった。


まるで今とは正反対だ。


だけど私たちが高学年に上がった時の頃だっただろうか。

彼方は突然、物事の全てを諦めてしまったのだ。


『成績が良いからってそれがどうしたの? どうしてみんな俺のこと、そういう目でしか見てくれないの?』


彼方の両親は、成績よりも『彼方が伸び伸び育てばそれで良いから』と言うようなとても良い人たちだ。

だがこの時、二人の仕事が忙しくてあまり彼方に構ってあげられなかったらしいのだ。

その後、彼方のお母さんの方は仕事を辞めて専業主婦となり、彼方のことをかなり気にかけてた様子だったが……


その時にはもう、遅かった。