「ねぇなんなの!? なにがいるの!?」
「……っ」
青ざめる私とは正反対に、くつくつと笑いをこらえるように震える彼方の体。
笑いを……こらえるように……ん??
「……彼方、まさか」
「ごめ、こんな簡単に……引っかかるなんて、思わなくてっ」
「もう、本当に怖かったんだから!!」
バッと彼方から体を離すと、彼方は「もうちょっと、くっついててもよかったのに」と言いながらもまだその肩は震えている。
「笑わないでよっ!!」
「ご、ごめん柚月……ほら、映画見よ、ね?」
「うぅ……ひ!?」
画面に視線を向けると、これまたとてつもなく怖いシーンでまた私の口から悲鳴が漏れる。
「怖いなら、また、俺のこと抱き締めてもいいよ?」
「こ、ここ怖くないから大丈夫ですー!!」
そんなやり取りを交えつつ約二時間半、
映画は無事エンドロールを迎えたのだった。



