「……うん。俺も、柚月の全部が欲しい」 ゆっくりと、彼方が私の頬に触れる。 「俺の全部をあげるから、柚月の全部が、俺は欲しい」 「じゃあ、私の全部をあげるから、彼方の全部を私にくれる?」 「もちろん」 頬に触れた彼方の手に、自分の手を添えた。 この約束だけで、私たちの関係なんて決まったようなものだけど、 私はまだ、一番肝心なことを、彼方に言ってはいないのだ。 「……彼方」 彼方の手が温かい。 その温もりが、私の心を落ち着かせてくれる。 そして──……