「あの、彼方?」

「なに?」

「家の中、その……もしかして誰もいない?」


ガチャンと、玄関の鍵が閉まる音が響く。

ゆっくりと、彼方が私に近づいてくる。


「うん、今日は俺一人しかいないから」


待って。

ちょっと待って。


それってつまり……




「今日は二人っきりだよ、柚月」




囁かれた声に、ゾクリと、身体が震えたのだった。