「でも、柚月さんだけは違った。柚月さんだけはわたしに話し掛けてくれた。わたしはあの時……柚月さんがハンカチを拾ってくれたあの時、心から救われた。ちゃんとわたしという存在をを見てくれている人がいるんだって、本当に嬉しかった」
たまたま廊下でハンカチを拾った。
レースのフリルがついたそのハンカチは、すぐにセレナちゃんのものだと分かった。
前にセレナちゃんが持っているのを見たことがあり、その時に『可愛いハンカチだなぁ、でも高そうだなぁ』なんて思った記憶が残っていたのだ。
私はすぐにセレナちゃんのところへ言った。
『これ、月城さんのハンカチだよね?』
『えっ、確かあなたは同じクラスの……なんであなたがわたしのハンカチを?』
『廊下で拾ったの。はい、あんまり汚れてないみたいでよかった。このハンカチ、白くてふわふわしててレースも可愛いね』
『わ、わたしのハンカチよ、可愛くて当たり前だわ。は、早くこっちに寄越しなさい!』
ハンカチをセレナちゃんに返した私は、すぐに彼方の元へ向かおうとセレナちゃんに背を向ける。
その時、セレナちゃんに呼び止められたのだ。
『あ、あの……こ、近衛さん!』
『ん? どうかしたの月城さん?』
『……り……がと』
『へ?』
『ありがとうって言いったの!!』
顔を真っ赤にさせるセレナちゃんに、私は『どういたしまして!』と返したのだった。
これが、私とセレナちゃんが初めて喋った時の思い出だ。



