「──……な、なかなかに凄かったわね」
「本当……に、ね」
文化祭の定番として真っ先にあがるであろう、お化け屋敷。
今年は一つ上の三年生が作ったらしく、セレナちゃんと一緒に行ってみたのだが……
「あれは文化祭でやるレベルなの? あまりにも怖すぎるわ」
真っ青な顔をしているセレナちゃん。
怖かった。物凄く怖かった。
「よ、よし、気を取り直して次に行こうセレナちゃん! ほら、こことか凄い人だかりが……ん?」
人だかりができている教室には『ババ抜きトーナメント』と書かれた看板があった。
中を少し覗いてみると……
「くっ、どちらかがハートのエース、どちらかがジョーカー! いったいどっちなんだ!?」
「ふっ、君の運命は二つに一つ……さあ選べ! この鬼龍院財閥の跡取り、鬼龍院司が君の運命を見届けてやろう!!」
「くっ、ダメだ、もう集中力が……!」
「ほら差し入れのせんべいだ! 鬼龍院に勝てば優勝なんだから絶対に諦めるなよ!!」
……セレナちゃんは真顔で私の方を向いた。
「行きましょうか柚月さん」
「そうしよっか」
私たちは次の教室に向かって歩きだした。



