「……はい、ココア。ちょっと熱いから気を付けて」
彼方が戻ってきて、私に温かいココアをくれる。
手渡されたココアは最初はほんのちょっと熱かったけど、だんだんと私の手に馴染んできて、その温かさに心地よくなってくる。
「ありがとう彼方! あ、ちょっと待ってね」
「ん……あ、お金とかいらないから。だから財布はしまっていいよ」
「……では、ありがたくいただきます」
次に彼方は鬼龍院くんの方を向き、鬼龍院くんにもココアを一本手渡した。
ココアをもらった鬼龍院くんは目を丸くして、彼方の方を見ている。
「僕にも買ってきてくれたのか一色クン!?」
「……まあ、ね。あ、鬼龍院もお金はいらないから。おごり」
「だがっ」
「もしかして、ココア苦手だった?」
「いや、そういうわけではない! わけではない、のだが……しかし……っ」
こういったことをされるのは初めてなのか、どうすれば……と言った様子で彼方とココアを交互に見る。
すると、少し呆れたように彼方はため息をはいて……
「気にしないでよ。俺とあんたは、その……友、達……なんでしょ? いちよ」