「柚月、そんなふうに考えて物事をするタイプじゃないでしょ? まず身体が動いちゃって、気付いたら巻き込まれてるタイプでしょいつも」


……確かに、考えるよりまずは行動することもあるけど。


「そ、そんなのたまにだよ! いつもはこう、ちゃんと考えて、少しでも認めてもらえるように、頼られるようにって自分のために!」

「わたしのハンカチを拾ってくれたことが、どうして柚月さんのためになるの?」

「え……っ」


彼方から体を少し離し、声がした方に顔を向ける。

そこには今まで黙っていたセレナちゃんが、腕を組み堂々とした様子で私を真っ直ぐ見ていた。


「わたしのハンカチを拾ってくれたことは柚月さんの優しさからだと、わたしは今でも思っているわ」

「そんなこと!」

「あの頃のわたしは、クラスの皆からあからさまに遠ざけられていた。だからわたしと仲良くしたところで、居場所どころか、柚月さんも浮いてしまう可能性だってあったはず。女子ってそういうところがあるでしょう?」

「わた、し……」

「僕に『一番以外にも大切なことはたくさんある』……そう教えてくれた時の君も、本当に自分のために行動していたのかい?」


セレナちゃんの隣にいる鬼龍院くんも、これまた堂々とした様子で私を見た。


「僕にはどう考えても近衛クンの利益になるとは思えないんだが? むしろ僕の考えを否定して、嫌われるリスクだってあったはずだ」