「で、近衛クンはメイド服は着ないのかね?」

「へ!?」


鬼龍院くんが、ちょっと期待を込めた瞳で私を見る。


「わ、私は裏方だから! ほら、それを着るのは表にでる人だけでしょ?」


執事服とメイド服を着るのは、表で接客をする人だけ。


そう決まったのはつい最近で、最初は普通の喫茶店をする予定だったのだけれど、

「普通の喫茶店じゃお客さんが集まらない」

という意見に確かにそうかもしれないと思い、急遽クラスで話し合いが行われた。

そしていくつかの案の中「執事喫茶とメイド喫茶がやはり王道で良いが、執事とメイドの衣装を今から揃えるのは大変なんじゃ……」という意見に対して、


「うちで使っているものならすぐに人数分用意できるが?」


そんな鬼龍院くんの一言で、私のクラスは執事&メイド喫茶店をすることになったのだった。



「……ふむ、近衛クンは着ないのか。残念だ」

「それよりも鬼龍院くんは執事服着ないの? 絶対に似合うから着なよって、さっき他の子からも言われてたでしょ?」

「あー……まあ、僕も接客はしないからな。それに客引きなら一色クンだけで十分だろう。もうすでにあんなに人気なのだからな」