「……あ、うん、そのっ」

「大丈夫……ゆっくりで、いいから」

「……うん」



ゆっくり、ゆっくりと幼馴染みの関係が壊れていく。


今まで歩いてきた道が崩れ落ちるみたいに、後ろを振り返っても真っ暗で、怖くて。


私はいつも、目の前の手にすがりつくことしかできなくて。



「……彼方」

「なに?」



もう戻れないことは分かっていた。

進まなきゃいけないことぐらい分かっていた。



〝近衛クン、もし本当に君が違うと思うなら、この手を振りほどけばいい〟



鬼龍院くんの言葉が、頭の中で何度も響いた。