「……それでも、無理だ。上に行かなければと、上に立たなければと……それはもう僕の使命だ」
ダメだ届かない。
鬼龍院くんに、届かない。
「でも、一番を取ったって、こんなふうに感謝の言葉をもらえるわけじゃない。誰かに頼ってもらえるわけでもない……これは鬼龍院くんだからこそなんだよ。一番なんて関係ない」
感謝の言葉をもらうことも、誰かに頼ってもらったり信頼されることも、そんな簡単なものじゃない。
それは私が、一番よく分かってる。
「……僕は、一番に……なりたくて……なってっ」
「……なって、どうするの?」
今まで黙っていた彼方が、呟くように鬼龍院くんに言った。
「一番になって、どうするのあんた?」
「僕はただ、そう教えられてきて……っ」
「そこに、自分の意思はないの?」
「自分の……意思?」
「……俺は、成績を褒められることより、それに至るまでの努力を認められた方が嬉しいと思う……あんたは沢山いるでしょ、ちゃんと認めてくれる人が、ここに」
ゆっくりと、鬼龍院くんは辺りを見渡した。
感謝の言葉と、鬼龍院くんが築き上げてきた信念。
それが、大きく揺れ動く。



