「……一色クンは、僕に喧嘩でも売っているのかい?」

「あんたは半端なんかじゃない……半端なのは、俺の方だから」


彼方……?


「一度、俺は全部諦めた……でもあんたは、違う。ちゃんと期待に応えようと、してる」

「だが事実、結果はどうだ! 僕はやはり半端な……!」

「……だとしても、俺はあんたが凄いと思う……それは、誇るべきものだと、思う」


それだけ言うと、彼方は鬼龍院くんに背を向けた。


「か、彼方、帰るの?」

「……うん……きっと、一人で考える時間も必要だから」

「……そっ、か」


教室を出る時に、もう一度だけ鬼龍院くんに視線を向ける。

鬼龍院くんはただただ窓の外を眺めているだけで、その光景は、いつも以上に大人っぽく見えた。