マドンナリリーの花言葉



しかし、エミーリアの侍女になるというのはいいこともある。
頻繁にディルクと顔を合わせることができるのだ。


「どうだ? 侍女の仕事は」

「体はメイドより楽です。だけど、精神がですね……」

「エミーリア様はあまりうるさくないだろう」

「でも、エミーリアの身だしなみに関してはメラニーさまが結構厳しくて」


メラニーが一番気にしているのは、髪の結い上げと化粧だ。
ローゼ自身がそれほど頓着していないので、元々上手ではない。しかし、王宮での身だしなみはローゼにかかっているとなると、自然に力が入ってしまうのだろう。


「ふうん、メラニー殿は意外とスパルタなんだな。……ところでローゼ。明日は休みか?」

「いいえ。今は休んでる暇がなくて」

「そうか。俺はまた墓参りに行くんだが良ければ一緒に乗せて行こうかと思っていたんだが」

「あっ」


パウラ様に、会いに行くのか。そう思ったら胸がズキンと痛んだ。
ローゼは唇を噛みしめる。


“自分が好きなだけでいい、見ていられるだけで幸せだ”

そんな気持ちはただの偽善だと、一緒にいるとどうしても思い知らされる。
本当は行かないでほしい。恋人じゃないとしても、パウラ夫人は彼に抱き付いたり、恋しい人に向けるまなざしを向けるのだ。