「す、すみません。私ったら。エミーリア様があんまりお綺麗でっ」
「あらあら、嬉しいこと言ってくれるのね。……でもローゼ。あなたこそ、ちゃんと着こなせば私より綺麗よ。……本当に無頓着なのねぇ。あなたみたいな純粋な子を連れ出して大丈夫かしら」
頬に手を当てて、困ったように小首を傾げる。
じっと見つめてくるまなざしに違和感を覚えて、ローゼは戸惑いながらも問い返した。
「え? あの、連れ出すって……」
「あなたに頼みたい仕事があるのよ。来月、私と一緒に王宮での夜会に出てほしいの。あなたは私の付き添いの侍女という立場ね。メラニーは連れて行かないから、それまでに一通りの作法と、髪の結い方だけは覚えてくれる? 私、自分だと結えないから」
「ええっ?」
「……というわけです。頑張りましょうね、ローゼ」
にっこりと笑うメラニーの声が遠くに聞こえる。あまりにも次々に起こる新しい出来事に、ローゼは頭がおかしくなりそうだった。



