「エミーリア様、おはようございます。入ってもよろしいですか」
「いいわよ」
言われて一緒に入ると、先ほどの部屋の倍ほどの大きさの部屋があった。豪華さも違う。天井のシャンデリア、模様の入った壁紙、置いてある家具も艶があり上等な木を使って作られているのが分かる。
「今日から侍女見習いとして一緒に働くローゼです」
「ああローゼ、来たわね。体調はもういいの?」
ローゼはエミーリアが自分のような下っ端の体調不良まで知っていることに驚いて、思わず頭を下げた。
「大丈夫です。エミーリア様、よろしくお願いいたします」
「そんなにかしこまらなくていいわ。私の話し相手になる程度に思ってくれればいいのよ。礼儀作法だけは覚えてほしいけど、人前だけでいいわ。……全く、お兄様ったら何を考えているんだか」
話しながら、メラニーは息をするように自然にエミーリアの着替えを済ませていく。
ローゼも手伝いたいとは思ったが何をどうしたらいいのか分からない。
「髪を結うから見ていて。やり方を覚えてほしいの」
「はい」
エミーリアの細い薄茶の髪を、メラニーは見る見るうちに結い上げる。化粧を施し、ただでさえ美しいエミーリアは、今は大輪の花のように美しく気品がある。
「綺麗……」
思わずつぶやいてしまって、口を押さえる。エミーリアとメラニーがきょとんとした顔でローゼを見ていた。



