マドンナリリーの花言葉


「手が熱いな、熱は?」

「大丈夫です。むしろ気分はいいんです。鼻は少し苦しいですけど」

「それは熱でハイになっているだけだ。額を触ってみろ。熱い」

「え?」


しかし手も火照っている彼女にはよくわからないらしい。ディルクはため息をついて、自分の手を彼女の額に乗せた。


「つめたっ」

「君が熱いんだ。全く、……体調管理くらい自分でできるようにならないと駄目だぞ」


呆れたように言ったディルクは、彼女を両腕に抱き上げる。


「えっ、ディルク様?」

「病人はベッドで寝なければ治らない。同室の人間にうつせないというなら別の部屋に行くしかないだろう」

「でも、あの」

「いいから来い。今日は俺が驚かせてしまったからな。……詫びだと思ってくれればいい」

「詫びって。……あの」


ローゼは戸惑ってはいたが、抗うほど元気ではなかった。彼に抱きかかえられ、揺られていると意識がもうろうとしてくる。


「……どこに行くんですか?」

「俺の部屋だ。心配しなくても、何もしない。フリード様が客人の接待中だから、俺は応接室の隣室で待機の予定だ。どうせ部屋は空いている。気兼ねせず、存分に咳をしていればいい。朝は他の人間が起きる前に起こしてやるよ」

「それじゃあ、ディルク様がお休みになれません」

「一日くらい寝ないのは慣れてる。君は別に何も気にすることはない」

「気に……なります……くしゃん」


ローゼはもっと彼と話をしたかったが、体のほうが続かなかった。呼吸が荒くなり、ベッドに落とされてからも体の震えが止まらない。

ディルクは使用人とはいえ特別待遇なので、部屋は個室で調度類も上等なものが用意されている。
自分のベッドよりもずっとふかふかなクッションに包まれて、ローゼは落ちていく意識を手放した。