マドンナリリーの花言葉


「くっくっ」


ディルクが肩を震わせながら笑っている。ローゼの顔は見る見るうちに真っ赤になってしまった。


「なっ……」

「笑って悪かった。いや。本当に中身は普通の子だなと思って」

「どうせ普通よりがさつです。みんな見た目に騙されて、私のことおとなしくて上品だって思っているんです。でも農家育ちなんですから、力だってあるし、ガサツにもなります」


ぷい、とそっぽを向きながらローゼは怒ってみせる。
だけど心は、ふわふわしていた。聞いた内容は衝撃的だったが、ディルクとの距離が近づいたような気がしたのだ。
パウラとの血縁関係の無さを知って、逆に彼の心の警戒が解けたようだ。


「……すみません」

「なんで君が謝る?」

「言いたくないことを言わせてしまって」

「いいんだ。俺の人生に、これはずっとついて回るものだ。過去は変えられないからな。それでも、使用人として雇ってくださるフリード様もいるし、人生は悪いことばかりではない」

「でも、……男爵位に未練はないんですか?」

「爵位があったって無能であれば何もできない。逆になくたって有能であれば何かを成せるだろう。それを証明するのも悪くない」


こともなげに言うディルクが格好良くて、ローゼの胸はせわしなく動く。