「ヨーゼフは、君に卑屈になるなと言っているんだと思うよ。使用人たちはその道のプロだ。君より裁縫の腕前が上手なのも掃除が上手なのも当たり前だろう。それが彼らの仕事なんだから。君には君の仕事がある。それに、誇りをもって取り組んでほしいということだと思うよ」
「卑屈……」
言われてみれば、そうかもしれない。
そつなく一日のスケジュールを管理してきぱきと動くヨーゼフや、家の中を見る見るうちに綺麗にしていくメイドたちを尊敬するのと同時に、ローゼは自分を卑下し続けていた。
「さしずめ君の仕事は、屋敷の中を明るくすることと、俺をねぎらうことかな」
「え?」
「知ってるかい? 君の夫は最近、君なしではよく眠れないんだ。夜寝ていても君の肌の柔らかさがないと目が覚めてしまってね。だから今日はどうしても帰って来たかったんだよ」
「……な、どうしたんですか」
普段は言わないような甘い言葉を並べられて、膝枕をされたままのローゼは顔が真っ赤になる。
「疲れた時は甘いものをと言うだろう?」
「それはこういうチョコレートのような……」
言葉の続きを吸い込まれて、ローゼは軽く身じろぎをする。ソファの上で、徐々に深くなる口づけに翻弄されながら、ローゼは必死に手を伸ばして彼の首に回した。
ひとり寝の寂しさを競うなら負けはしない。
ローゼは昨晩、何度も夢の中で彼のぬくもりを求めて手を伸ばし、そのたびに目を覚ましたのだ。
「俺にとってのチョコレートは君だよ」
耳元で囁いたディルクは、彼女を横抱きにし、場所をベッドへと移した。
お土産のチョコレートより甘い、濃密な時間が、ふたりを待っていた。
【Fin.】



