マドンナリリーの花言葉




それから数日、パウラとクラウスはなんだかんだと仲睦まじく暮らしていた。
パウラの意思を尊重して、ベッドは共にしていないが、それ以外はまるっきり夫婦のようだ。

着々と婚礼の日程は決まり、公式発表は三日後に迫っている。
パウラは毎日、女王から呼び出され、しきたりだの作法だのを叩きこまれている。

パウラはすっかり疲れ、夕飯の後はすぐ寝てしまうような生活を送っていた。

その日も、ひと眠りした後、のどの渇きを感じてパウラは部屋から出た。深夜の三階は使用人もあまりうろつかない。廊下から人の気配はせず、一階の厨房まで行かなければいけないかしら、とパウラはため息をひとつついた。

そのとき、クラウスの寝室の戸が少し開いていて光が漏れているのに気付いた。
不審に思って声をかけようと近づいた時、予想外に女の声が聞こえて、パウラは思わず息を飲んだ。


「だから、お願い。一度だけでいいの」


聞き覚えのある声だ。パウラは隙間から覗くが、令嬢の後ろ姿は見えるが顔までは判別できない。


「自分が何を言っているのか分かっておられるのかな? それは兄上に対する侮辱ですよ」

「だけど、彼のせいでしょう? 私に子ができないのは。あなたにだって利益のある話よ。王位は継ぎたくないって、いつも言っているじゃないの。大体、王家にとってだって、正妃に子が出来るのは喜ばしいことでしょう?」


会話の相手が、クリスティアーネだと知って、パウラは驚きで息をのんだ。室内のクラウスの声はくぐもってはいるが、明らかに侮蔑の態度をあらわにしている。