マドンナリリーの花言葉


「だと思ったよ。だけどね、パウラ。悪いが俺は君を離したりしない。俺はね、人の言うことなど聞かないんだ。やりたいようにする。君が俺を助けたいと思うなら、おとなしく妻になって、俺の子供を産むことだよ」


ここまで堂々と自分のわがままを公言する男などいるだろうか。
呆れてしまいつつ、その自信満面な態度に、強烈に惹きつけられる。


「あなたは馬鹿なの……」

「そうだね。だから有能な参謀とか、しっかりした妻が必要なんだよ。いいかい、君は俺に必要なんだ。君が信じなくても、現実にそうなんだよ。だから諦めて俺を受け入れたらどうだい?」


背中に回された腕、あやすように落とされる唇。身をまかせそうになる衝動にパウラは首を振る。
受け入れたくない、なんて言っていない。ただパウラは、クラウスの弱みを作りたくないのだ。


「……床入りは結婚してからです」

「今時律義にそれを守っている奴がどれだけいるって言うんだい」


お姫様抱っこをされ、パウラはベッドに寝かされる。睨んでやろうと思ったが力が入らない。予想以上に体全体にアルコールが回っている。


「ダメ……」

「うん。さすがに今日はやめておくよ。ここを押し切ると君に嫌われそうだからね。……お休みパウラ。とりあえず君の本心が聞けただけで、今日は満足だよ」


額を撫でられて、パウラはほっとして力を抜く。重力を全身に感じて、けだるい。

クラウスはそのまま、ベッドに腰を掛けて時折パウラに視線を向けながらワインを楽しんだ。
その姿をぼうっと見ているだけで、パウラは不思議と胸が熱くなる。
目尻に熱い滴が溜まり、ゆっくりと伝って枕に落ちた。


「……クラウス様」

「うん?」

「私は国民の望む妃にはなれませんが、……あなたを愛する妃にはなれそうです」


クラウスが目を剥いたように驚いた顔をした。その表情が、どうしようもなくかわいく見えて、パウラは微笑んだまま目を閉じた。


「……凄い爆弾を落とすもんだね、君」


クラウスはポツリとつぶやいて、赤くなったであろう頬を誰にともなしに隠した。