「座らないか、パウラ。乾杯といこう」
「まあ、飲んでらっしゃるの」
「乾杯しようと一度呼びに行ったら寝ていたんだ。一応ひと眠りしただろう時間は待ったぞ」
「それはお気遣いありがとうございます」
パウラが腰を掛ける前に、目の前のグラスにクラウス自ら白ワインを注いだ。
「ありがとう。……でも、私、お酒を飲んだことはないの」
「ほう?」
「晩餐会にも出たことがないし。子爵は私との食事にお酒は出しませんでした」
「ではこれは君の初アルコールか。それは楽しみだ。ほら、乾杯」
初アルコールで何が楽しいのか。
パウラは呆れつつ興味津々でグラスを傾けた。
口に含んだ瞬間、フルーティーな甘みが口に広がる。しかしながらやはりアルコール。最後に残る苦みに、パウラは顔を微妙にしかめた。
「おいしいかい?」
「少し苦いです」
「慣れるとこれがうまいと感じるんだ。君は大人だが、社交経験が足りない分変に子供のようなところがある。まあそこも面白いけれどね」
「まあ」
十も年下の男にそんな風に言われては立つ瀬がないが、事実は事実か、とパウラは思う。
ワインの苦みには慣れない。そして、体にゆっくりと熱が通り、ぼうっとしてくる感覚も。
「今日は疲れただろう」
「当たり前です。あなたは第二王子なのよ? 国民が望むような若く美しいご令嬢を妃として、国の繁栄に尽くさなきゃいけないのではないの」
「それは王太子の仕事だろう。俺は兄上を支える立場であって、国のことまで知らないよ」
「でも周りはそう思っていないわ。ここにきてまだたいして時間は経っていないけれど、あなたに期待している人も数多くいることを私は知ってしまったもの」



