「え? 嘘……。本当ですか、旦那様」
ゾフィーの声に驚きが乗る。パウラはいつもとは違う様子を感じ取って、聞き耳を立てた。
「まあ、本当ですか? 生きていたなんて。……パウラ様にお会いさせるんですか? はい。ええ、大丈夫ですわ。パウラ様は目が見えませんもの。はい。私にお任せくださいませ」
どうやら何らかの悪だくみをしているらしい。
パウラは息をひそめて、ふたりの会話に聞き耳を立てる。そして、しばらくして何食わぬ顔をして自室へと戻った。
やがてゾフィーがやってくる。顔には優しい笑みを乗せて、子供の機嫌を伺うような声を出す。
「パウラ様。来客が見えるそうです」
「そう」
「それが……、何を勘違いしているのか、自分はパウラ様の娘だと言っているのですって。ただ、旦那様は行くところがないのなら囲ってやってもいいと仰せですの。パウラ様には、母親のふりをして欲しいと。後のお世話は旦那様のほうでうまくやってくださるとのことですわ」
パウラは胃に苦みが沸き上がるのを感じた。
夫の趣味を散々押し付けられてきたパウラには、彼の意図などすぐに分かる。
「私の娘は死んだのではなかったの」
「ええ。もちろんですわ。私、死んだお子を見ましたもの。だからこれから来る娘はただの狂言者ですわ」
「だったら追い返せばいいじゃないの」
「ですが身寄りのない娘を放っておけないそうです。旦那様はお優しいですから」
どこが、とパウラは思う。唾を吐きかけたい気持ちさえ持っていた。それでもパウラが表情ひとつ変えずにいられるのは、これまでの人形ごっこのせいで、無表情を貫くことに慣れていたからだ。



