「半年後、彼は求婚してくれた。その時にローゼのことは話したわ。追ってこられたときに知らないではまずいから。あの人にとってはどっちにしろ自分の子じゃないのだから一緒だと言って。それからあの子をわが子だと思って暮らしてきたのよ」

「そうして、ローゼを守っていてくれたんですね。ありがとうございます」

「でもあの子、ずっとこんなところで育ったくせに、綺麗なものが好きなのよ。ドレスやステンドグラス、花も豪華なものが好きね。なんなんでしょうね。やっぱり血って無視できないものなのかしら。選んでくる人も、貴族のご子息様だものね」

「私は今はそんな身分にありませんよ」

「だとしても、私たちとは違うわ」


ローゼの母は寂しそうに笑う。ほんの少し拗ねたような声で、ぽそりとつぶやく。


「……頂いたお金はほとんど手を付けていないの。あの子が行くべき場所を見つけたら、持たせてやろうと思ってた」


そして次に顔を上げた時、彼女の瞳には涙がうっすらと浮かんでいた。


「……娘をよろしくお願いします」


ディルクはなんと言ったらいいか分からず、ただ彼女の手を握って誓った。


「ローゼを一生守っていきます。……あなたたちの代わりに」