*
花農園につくと、馬の音に、まずローゼの母親が出てきた。
「あらまあ、この間の。それにローゼ、どうした急に」
「あの、あのね、ママ」
「今日はお願いがあってまいりました。お父上にもお会いしたいのですが、ご在宅ですか?」
「ええ。……まあ入って。なんかただならぬ感じだしねぇ」
母親はふたりを眺め、ニヤニヤと笑って農園のほうへと行く。
呼ばれてやって来た父親は、ディルクを見て眉を顰め、「なんだこのお坊ちゃんは」と怒り顔だ。
「あ、あのね、パパ」
険悪そうな雰囲気を打開すべくローゼが口を開くと、それをディルクが止め、ふたりに向かって頭を下げる。
「ぶしつけなお願いで申し訳ありません。どうか私に、お嬢さんをいただけないでしょうか」
「まあ」
「なんだと?」
ブレーメン氏は不満を隠そうともせず、テーブルに音がなるほど拳を打ち付けた。
「どこの誰かも知れない男にローザをやれるか!」
ディルクは頭を上げ、自己紹介を失念していたことに気付く。そして彼にしては珍しく、頬を赤らめた。
ローゼは目を見張ってそんな彼を見つめた。胸の中では見たことないほど照れているディルクに大騒ぎだ。
(なにこれ、かわいいディルク様なんて初めて見る!)
彼はコホンと咳払いをして、ようやく自分を取り戻したように笑う。
「失礼しました。ディルク=ドーレと申します。現在はクレムラート伯爵のもとで仕事をしております」
花農園につくと、馬の音に、まずローゼの母親が出てきた。
「あらまあ、この間の。それにローゼ、どうした急に」
「あの、あのね、ママ」
「今日はお願いがあってまいりました。お父上にもお会いしたいのですが、ご在宅ですか?」
「ええ。……まあ入って。なんかただならぬ感じだしねぇ」
母親はふたりを眺め、ニヤニヤと笑って農園のほうへと行く。
呼ばれてやって来た父親は、ディルクを見て眉を顰め、「なんだこのお坊ちゃんは」と怒り顔だ。
「あ、あのね、パパ」
険悪そうな雰囲気を打開すべくローゼが口を開くと、それをディルクが止め、ふたりに向かって頭を下げる。
「ぶしつけなお願いで申し訳ありません。どうか私に、お嬢さんをいただけないでしょうか」
「まあ」
「なんだと?」
ブレーメン氏は不満を隠そうともせず、テーブルに音がなるほど拳を打ち付けた。
「どこの誰かも知れない男にローザをやれるか!」
ディルクは頭を上げ、自己紹介を失念していたことに気付く。そして彼にしては珍しく、頬を赤らめた。
ローゼは目を見張ってそんな彼を見つめた。胸の中では見たことないほど照れているディルクに大騒ぎだ。
(なにこれ、かわいいディルク様なんて初めて見る!)
彼はコホンと咳払いをして、ようやく自分を取り戻したように笑う。
「失礼しました。ディルク=ドーレと申します。現在はクレムラート伯爵のもとで仕事をしております」



