「なかなか面白そうな男じゃないか。女性もさることながら、そっちにも興味が出てきたよ、俺は」
楽しそうに髪を直すクラウスに、冷めた視線を向けながらギュンターは忠告をする。
「フリード殿はなかなか有能だよ。彼を揺さぶりたいなら、今日後ろについていた従者の話を持ち出すといい。爵位剥奪されたドーレ男爵家のご子息だそうで、爵位復活に躍起になっている。……前にも話したろ?」
「ああ、聞いたな。ドーレ男爵もなんとなく覚えているぞ。先代のクレムラート伯爵とよく王宮に来ていた。どこかの奥方と不倫をしていたとか聞いて、おもしろいなと思っていたんだ。あの真面目そうな男がその息子かぁ。面白くなってきたじゃないか。ギュンター、これはじっとしてる場合じゃない。会場に行こうじゃないか」
「いいか、羽目だけは外すなよ。これだけ呼んでいない客が来てるということは、国王様もお前の奥方探しに本腰を入れられたってことだからな」
「分かってるよ。王子という立場も面倒だな。いっそ捨ててしまうってのも悪くないかもな」
茶化すように言うクラウスに、ギュンターは目をすがめてみせた。
「……お前の絵画道楽の資金がどこから生まれているのか考えてから言うんだな。王子という立場を捨てれば、今までのような道楽はできないぞ」
「あーあ。ギュンターは父上や兄上とは違うところから追い詰めてくるから嫌だなぁ」
クラウスはそうごちると、逃げるように先を急いだ。



