うちの恋は、炭酸の抜けたサイダーみたい。



気が抜けて、まるで甘ったるいだけの飲みもので。

ぱちぱちと口の中で弾ける感覚こそが炭酸の醍醐味やっていうのに、それやったら意味がない。

そんな、サイダーみたいに弾けて消える恋やった。そう思ってた。



でもなぁ、不思議やな。

かんたんなことでくじけて、もうあかん諦める、なんて告げる前に弾けなくなるはずやったのに。

好きな人のほんまに些細な一言で、期待して、どきどきして、あ〜もうやっぱ好き! って気持ちは浮かぶんや。

それこそ、まるでサイダーみたいに。



だから上牧へ向けたうちの恋心は、どんだけ振っても炭酸が消えたりせーへん。



ガコン、と自販機の中で恋に落ちて。

こぽり、気泡が浮かんでいく。

まだ好きや、好きで好きでどうしようもないんやって。



「なぁ、上牧」

「ん?」

「……やっぱまだ内緒! 次の模試、絶対勝つからな」

「なんやそれ」



ばかにしたように、上牧が小さく吹き出す。

頰に伝う汗さえも眩しく見える。



「ほな俺が勝ったら……デートな」

「……はあ⁈」



しゅわしゅわと恋が、また浮かぶ。



               fin.